個人のためのサイバーセキュリティ・ハンドブック
会社に預けたあなたの情報が漏れるのを、個人が防ぐことはできません。
減らせるのは、そのあとの被害です。まず3つから始めてください。
2026.10.08 / 発行 amn studio
このページは長めです。気になるところだけ読んでも構いません。
画面上の「目次」ボタンから、いつでも目次を開けます。
同じパスワード
鍵が1本。
1か所漏れたら全部開く
別々のパスワード
鍵が別々。
被害は1か所で止まる
被害が大きく広がるとき、原因になっていることが多い点です。覚える必要はありません。スマホに作らせて、スマホに覚えさせます。
パスワードだけ
盗まれたら
そのまま入られる
パスワード+顔や指紋
2つ目の扉で
止まる
パスワードが盗まれても、それだけでは入られにくくなります。いま個人が取れる対策のなかでは、効果の大きいものです。新しく覚えることはなく、顔か指紋で終わります。
住所も生年月日も、相手はもう知っています。だから、本物の会社の担当者のように話してきます。出ないことが、負担の少ない防ぎ方です。気をつけ続けるのではなく、設定に任せます。
一度設定すれば済む、というものではありません。3つだけ覚えてください。
有名な会社からでも、登録しているサービスからでも同じです。まず差出人のアドレスを最後まで見てください。
リンクは押さず、公式アプリか自分で検索した公式サイトから入る。これだけで、フィッシングの多くは避けられます。SMS も同じです。
できればスマホのテザリングを使う。無料Wi-Fiを使うなら、自動接続をオフにし、VPNアプリを通す。ブラウザが警告を出したら、すぐ接続を切る。
VPN / 第三者の監査を公開している主なもの(最新の状況は各社の公式サイトで確認を)
無料や無名のVPNアプリには、通信内容を記録して売るものが混ざっています。監査報告を公開している事業者を選んでください。
LINEやメモアプリに控えていると、そこが破られたときに全部まとめて持っていかれます。
置き場所はパスワード管理アプリかスマホの標準機能に一本化する。家族に送ったメッセージが、何年も残っている例もあります。過去のメッセージをさかのぼって、今日のうちに消してください。
近年とくに増えている手口です。利用者自身が操作してしまうため、ウイルス対策ソフトでは防ぎにくいとされています。
画面に出た指示に従って、キーボードを操作したり、貼り付けたりしない。
本物のサイトが、そうした操作を求めてくることはまずありません。
感染に気づかないのが、このウイルスのいちばん怖いところです。ランサムウェアのように画面が止まることはなく、何ごともなく動き続けます。
なお、有料ソフトを無料で配っているサイトや、違法にコピーされたソフトも、このウイルスの主要な配布元です。使わないでください。
効果の大きい順に並べています。どれも無料でできます。
生成AIは、守る側だけでなく、だます側にも使われています。見破る力を鍛えるより、見破らなくて済むやり方に切り替えるほうが現実的です。
米国の FBI は、AIで家族の声を再現し、事故や逮捕を装って送金させる手口に注意を呼びかけています。対策として挙げているのが、家族のあいだで本人確認用の合言葉を決めておくことです。
声が本人そのものでも、合言葉を知らなければ本人ではありません。AIがどれだけ精巧になっても、この一手は効き続けます。
メールアドレスを入れるだけで、過去の漏えいデータに含まれていないか無料で確認できます。セキュリティ研究者のトロイ・ハント氏が運営し、1Password とも提携している世界的なサイトです。表示は英語ですが、入力欄は1つだけです。
信用情報機関に開示を求めると、自分名義の契約の一覧を確認できます。身に覚えのないカードやローンがあれば、そこで気づけます。
3か月から半年に1回で十分です。
文面は年々自然になっています。日本語の不自然さでは見破れません。
差出人 □□サービス事務局 <info@secure-□□-support.net>
【緊急】お客様のアカウントが凍結されました
情報漏えいの影響により、アカウントを一時停止しております。
24時間以内に下記より本人確認をお願いいたします。
https://□□-service-verify.net/login
得意な人が、苦手な人の分も設定してあげてください。
USBメモリのような小さな鍵を、パソコンに挿したりスマホにかざしたりしてログインする方式です。鍵が手元になければログインできないため、個人が取れる備えとしては強い部類に入ります。
仕組みはパスキーと同じです。パスキーをスマホの中ではなく、持ち歩ける物として取り出したもの、と考えると分かりやすいと思います。接続先が本物かどうかを鍵自身が確かめるため、偽サイトでは反応しにくい仕組みです。
買うなら必ず2個。1個しかない状態で紛失や故障が起きると、自分も入れなくなります。1個を普段使い、もう1個を自宅の金庫などに予備として保管してください。あわせて、各サービスの復旧用コードを紙で保管します。
向いている人は限られます。対応しているのは Google、Microsoft、Amazon、楽天市場、各種暗号資産取引所などで、日本の銀行の多くはまだ対応していません。暗号資産を持っている、事業の重要なアカウントを守りたい、過去に狙われたことがある。こうした事情がなければ、スマホのパスキーで十分です。
先にパスキーを使えるところすべてで有効化する。物理キーを考えるのは、そのあとで構いません。
これで十分という意味ではありません。ここから始める、という意味です。
「詐欺かな」と思った時点で相談していい番号です。確信がなくて構いません。
家族の中で「最初に相談する人」を決めて、電話のそばに書いておいてください。相談先が決まっていないと、詐欺の相手に相談してしまいます。
このページに書いたことを全部やっても、安全にはなりません。安全という完成した状態が、そもそも存在しないからです。新しい弱点は毎週見つかり、手口は作り変えられ、昨日まで有効だった備えが今日は足りなくなります。
「これだけやれば大丈夫」と考えてしまうこと自体が、被害が起き続けている理由のひとつだと思っています。だから、このページも「大丈夫になるための手順書」としては読まないでください。
最後に、いちばん確実なことを書いておきます。使わないサービスは退会する。身分証を預ける先を減らす。必要のない情報は渡さない。
技術がどう変わっても、この原則だけは古くなりません。